代代代/The absurd is the essential concept and the first truth
1.不安
2.不明
3.EHM
4.ピラニア
5.死神
6.融解
7.清潔
大阪発"SOLID CHAOS POP(最近自分たちのことこう呼ばなくなりましたね)"を標榜するアイドルグループ代代代の3/6発売の全7曲入りミニアルバム、タワーレコードの紹介文にも"代代代史上最も気の触れた最狂アルバム"とのお触れ込みでデカいこと書かれたこの新譜についていつもの通り長文で色々書いていこうかなと思います。
既存の音楽との比較や音楽理論の話とか多少出てきたりするので苦手な人はスルーしてください
1曲ずつ感想書いて最後に全体の感想書きます
1.不安
冒頭からいきなりベースレスのシンプルなトラックにDeath Gripsを彷彿とさせるノイズが雷鳴のように切り込んできて後半でガバキック混じりのNine Inch Nails"Mr.Self Destruct"といった趣に2ビートで疾走するインダストリアルナンバー
Aメロで琉球音階が使われててインダストリアル+琉球音階というとBUCK-TICKっぽい感じもある
2.不明
Tim Heckerみたいなシンセメインのインストのアンビエントノイズ小曲、インタールード的にも感じるけど前々作『むだい』収録のインタールード曲の"インター流動"に比べてコードがしっかりあるからかなり音楽的でライブでどういう取り扱いになるのか気になるところ
3.EHM
1コードで不安定な非和声スケールを取りながらリフレインする図太いシンセベースのラインを繰り返しながらミニマル的にノイズ音足したり展開していくロックナンバー、バンド寄りの曲は今までにもあれどこのミドルテンポでミニマルに展開していく感じは今までの代代代では無かったタイプの曲かも
The Jesus LizardやScratch Acid、『LIGHT,SLIDE,DUMMY』あたりのMO'SOME TONEBENDERを彷彿とさせるジャンクロックぽさがあるし音作りは『4 PLUGS』のThe Mad Capsule Marketsぽさもあり90年代オルタナティブロック、メタルが好きな人はこの曲が1番ピンと来そう
4.ピラニア
既発曲の再録、再アレンジ
Radiohead"The National Anthem"を彷彿とさせる入りから溜めてブレイクコア的に爆発するファンの間でも人気な曲なのですが再アレンジでスネアの音圧増して少しBPMを落としているためよりヘヴィな印象に、メンバーの歌声が聴き取りやすくなってるのも好印象
5.死神
先行で1番最初にリリックビデオが公開された曲、ティンパニや弦楽器風のストリングスの音が多用されたともすればV系っぽさも感じるゴシカルな代代代でも異色の作風
歌詞のテーマは古典落語の『死神』がモチーフという説もあるそうで
http://sakamitisanpo.g.dgdg.jp/sinigami.html
アレンジは今までに比べて異質なのですがⅣ→Ⅲ→Ⅱ→Ⅲの逆循環風の進行自体は既発曲"血湧き肉DANCE"でも用いられてたり(作曲の小倉ヲージ氏が敬愛するCoaltar Of The Deepersの楽曲でもわりかし用いられてる)してるため1番"らしい"曲という感じもある
一定のコード進行からメインメロディのスケールを変化させて雰囲気を変えてくる作りが特徴的
6.融解
先行でMVも出た本作のリードトラック、個人的にアルバムで1番好きな曲です
Arca、Zola Jesus、Sturle Dagsland等のエクスペリメンタル寄りな電子音楽をアイドルポップスに落とし込んだといった趣で静謐なメロディにトライバルなビートやノイズが激しさを持って展開していく怪作
『むだい』の"歪んだ歪み、歪んだ歪み"や前作『∅ 』の"ボロノイズ"もそうでしたがこういう現行アンダーグラウンドシーンに通じるノイズやリズム表現を損ねずわかりやすいメロディの作曲に内包するといった手法が小倉ヲージという人のわかりやすくすごい所の一つだよなと毎度思ってます
7.清潔
ノイズに始まり半音ずつクリシェしていくメロディを繰り返すパートからノイズや4つ打ちのキックなど入れながら展開していくジャンル分けも難しいサイケデリックな音像の完全にエクスペリメンタルな曲、映画音楽っぽさもある
総評
今までの代代代と言えば「わかりやすくポップなメロディを内包したメジャーキーの楽曲」を必ず配置していて(ワールドワイドハピネス、OH HAPPY DIE...etc)そこがアルバムに置ける「救い」や「緊張に対する緩和」として機能してた部分がありましたが今作はそういった楽曲をアルバム内に一切配置せず終始インダストリアル、アンビエント、ノイズ、ジャンクロックを参照したノイジーで破壊的なサウンドでメロディの起伏も今までに比べ少なく陰鬱に終わるので"代代代史上最も気の触れた最狂アルバム"というタワレコのキャッチコピーもうなづける出来合いとなってます
その反面リズム面や用いられてる音についてロック、バンドサウンド寄りの影響を匂わせる楽曲も多くストレートなわかりやすさもあり(この辺りは小倉さんが前年度度々ツイートなどしてフェイバリットと公言してたTHE NOVEMBERS『At The Begining』やBUCK-TICK『Abracadabra』辺りのバンドサウンドとエレクトロニクスを織り交ぜた作品群の影響もあるのかなと勝手に推測してます)、前作までにあった1枚でジャンルを横断するような良く言えば多彩、悪く言えばとっ散らかった感じが無くキャッチコピーの反面アルバムとしての整合性に優れた聴きたい気分の時に一枚丸々通して聴きやすい仕上がりになってるのではないかなと思いました
バンドサウンドとエレクトロニクスの境界線を超えると言った近年のロックシーンを汲み取った内容はジャンルそれ自体が音楽の形を取らずオケのライブを想定したバンド編成ではない"アイドル"という括りと親和性が強いと思うのでそういう意味では「アイドルなのに」と言うよりはむしろ「アイドルならでは」とも言えるアルバムだし今後のアイドルシーンにおける試金石になりうるアルバムとも言えるなと個人的には思うしそれを期待できる内容だなと感じてます
幅広い音楽のファンベースに聴いてほしい1枚です