代代代/∅
収録曲:
1. すべてが薄明の中で
2. やめさせろとめさせろ
3. 愛ね暗いね
4. 棺桶だらけかと思った
5. 細胞
6. 8 BIT GAG
7. ボロノイズ
8. OH HAPPY DIE
9. くちうつしうつくしゐ
もうこれを見てる人は大体存じているかと思いますので説明は割愛します
大阪の"SOLID CHAOS POP"を標榜するアイドルグループ代代代の5/27発売の新体制初のニューアルバムですが先行販売のフィジカルが届きまして、わかってはいましたが内容があまりにも良いのでツイッターで長文細々とTLに垂れ流すよりはこっちで一回書き尽くしちゃおうと思いましてのレビューです
本日公式BASEでデータ版の販売も開始したので気になった人はぜひに
http://ass-atte.hatenablog.com/entry/2018/10/29/224325
↑前アルバム『むだい』との比較もあるので前に書いたレビューも是非、代代代知らない人もまずこっちを読むといいかもしれません
メンバーの話無しで(こっちはツイッターでやります)音楽理論の話と他音楽との比較の話が出てくるので苦手な人はごめんなさい
各曲感想
1.すべてが薄明の中で
新体制初リリース曲『すべては薄命の中で』のリテイク、リアレンジ曲です
7thのコードをバックにDビート風の打ち込みで疾走するThe Mad Capsule MarketsとかCoaltar Of The Deepersを思わせるハードコア風味のある曲
元曲と比較してブレイクダウン風パートのキックの音圧がかなり強くなっててより踊れる感じに、3拍子のパートにシンセで入ってた♭2の不穏な音が無くなったのは個人的に残念ですがここは原曲と比較という意味で楽しめるからオッケーです
2.やめさせろとめさせろ
ラテン風のリズムとシンセのきらびやかなUKガレージ感ある曲(⁉︎)、このグループにしては珍しく途中で転調も入ってたりで新鮮、最近のFriendly Firesっぽさもあるかも
作曲はサウンドプロデューサー小倉ヲージ氏の盟友545London氏によるものみたいです
3.愛ね暗いね
Underworldの"Born Slippy"を思わせるような四つ打ちキックのハウス風の入りやブレイク一歩手前のタム回しのパートからグリッチ全開のブレイクコアに流れるわかりやすいカタルシスのある曲
打ち込み音楽の引用に留まらず2つ目のサビでリズムパターンをスピードメタル風に置き換えたり(過去にも"スティーヴンモノリス"でやってる)しっかり過去を踏襲しててオタク的にはニンマリするやつですね
歌メロもめちゃくちゃにキャッチーでシングルカットされるならコレって曲です
4.棺桶だらけかと思った
ハードコアテクノというよりはPercとかI Hate Modelsみたいなハードテクノ風の音のキックが鳴る高速BPMのリズム上にニューレイヴみたいなギラギラのシンセアルペジオが乗っかるパーティチューンなんですが歌メロにがっつりホールトーンとか非和声音で構成されたスケールが入っててどこか不穏さもある曲
歌詞がめちゃくちゃ秀逸で「諦めないと胸に誓った」など歌詞がこのグループにしては有り得ないくらいポジティブなワードがひたすら「棺桶だらけかと思った」という不穏なフレーズに挟まれる独特のセンスが好きですね
5.細胞
懐かしい風味のシンセとグリッチノイズの上にメンバーの歌が乗っかる小曲、ダンスミュージック寄りだった前半から様変わりする前のインタールード的な感じもあります
6.8 BIT GAG
既発曲『8 BEAT GANG』のリテイク、リアレンジ曲(音源はライブ特典のみなので比較したい人はライブ映像などで探してみてください)
Nine Inch Nailsの"Wish"のオマージュっぽいものも入ってたインダストリアルメタル直球の原曲に比べてガレージロック風のラフな音でフレーズもニューメタル風リフ、NWOBHMみたいなツインリード、ドラムソロが入ってて打ち込みのダンスミュージック風の楽曲が多かったアルバム前半から一気に様変わりした感じに
個人的にはHorse The Bandみたいなニンテンドーコアっぽさも感じてます
7.ボロノイズ
先行試聴で多くのオタクを驚かせた13分強の長尺曲
一定のキック、祭り囃子みたいなタム回しのミニマルな6/4→7/4拍子のビートの上に"誰か"に対する呪詛を延々とヨナ抜き音階のリフレインで歌われるボーカルやドローン音楽のような趣の歪んだパワーコードのギターリフやサイケデリックトランスみたいなシンセアルペジオ、新しいNeu!とかにも通じる生音風の一定のドラムパターンなどがどんどん足し引きされて延々と繰り返されて彼岸の彼方に向かっていくような呪術的な曲、なのにどこかキャッチーなので普通に聴けてしまうという
特に後半の歌が重なっていくところ基本的にはBPM160の6/4(3/4)なんですが(多分)歌の強拍が表にめちゃくちゃ食い気味で入ってて結果BPM100の4/4にも聴こえてしまうというポリリズム風の様相まで飛び出してきます(Twitterにも書きましたが)
Einstürzende Neubautenなどのインダストリアルからジャーマンプログレ、Tool、今年新譜の出たOranssi Pazuzuのサイケ、プログレメタルにも通じる完全にアンダーグラウンドな音楽がまさかアイドル"ポップス"から出てくるとは誰も思わなかったと思います、すごいぜ
8.OH HAPPY DIE
小倉ヲージ氏の元々やってたバンドDRINKPEDのカバーらしいです
ボロノイズの暗黒とは打って変わってどキャッチーなニューレイブテイストのある楽しい曲
歌詞に「ダモ鈴木だもん」というフレーズがあって笑ってしまった(CANのボーカル)
9.くちうつしうつくしゐ
MVも出た前体制『くちうつしうつくしい』のリテイク、リアレンジ曲
この『くちうつしうつくしい』という曲については個人的に曲以外の思い入れも強くて最初はどういうアレンジになるか期待と不安が半々だったのですが見事です
7/4のリズム上でマスロックやプログレ、フリージャズっぽさも感じさせるようなつんのめった手数バキバキのドラムパターンの上にFM7→G♭M7のリフレインが乗っかり暴力的なブレイクコアのドラムパターンなども加えながらキャッチーなメロディのまま収束する宇宙っぽさすらも感じる原曲の良さを残しつつ『∅』のラストとして相応しい意味のあるアレンジに仕上がってて感動的でした
部分で言うとサビの「きらめきが一瞬で ケセラセラ 毎秒」のコード進行が原曲ではⅣ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ→ⅤなのがⅣ→Ⅴ→Ⅴ♯→Ⅵ→Ⅴになってるのも細かいですがラスト曲としての緊張感やカタルシスを高めるのにも繋がってて個人的にすごく好きなポイントです
総評まとめ
明確にインタールードなどを挟み全体的に音の広がりや音数も少なめだった『むだい』から一転『戌戌戌』のブレイクコア要素の復活や転調の導入など音数やメロディの起伏が圧倒的に増えてカラフルなアルバムになってます
反面リズム面やジャンルの取り入れ具合に関しては変拍子、ポリリズムを取り入れたりあらゆるジャンルを1曲で横断したり今までで1番複雑化してる印象
特に"ボロノイズ"はアイドル楽曲の一つのマイルストーンとも言える出来で令和始まって早々これがオルタナティブなジャンルを取り入れながらも基本的には"ポップス"の形を取るアイドルシーンから出てきたのは本当に新しい時代を感じますね
アイドルオタク、音楽オタクの皆様幅広く聴いて欲しい衝撃的なアルバムです
マスターピースだぜ、出雲